【本のレビュー】勉強するのは何のため?僕らの「答え」のつくり方|苫野一徳
前回『ミライの授業』という本を紹介しましたが、それに続けて同じテーマで読んだ本を紹介します。哲学・教育学が専門の苫野一徳(とまのいっとく)さんの著書です。
読んだきっかけ
今年正月に実家に帰った時に、中学1年の姪っ子にまさにこの本のタイトルのように「ねぇ、なんで勉強するの? 今やってる勉強って意味あるの?」と聞かれたからです。
誰でも一度は考えたことがあるだろうこの疑問。でも考えても答えが出なくて、なんとなくおざなりにしたまま流されてきたこの疑問。それを姪っ子に真正面から問われて、きちんと答えたくて、二冊の本にたどり着きました。そのうちのひとつが今日紹介するこの本。前回のブログにはもう一冊紹介しているので、こちらもどうぞ。
印象深かったところ
この本が特徴的なのは、哲学からのアプローチにあります。哲学者は、
「正解」のない、でもなんらかの「答え」がほしい問題の数々をとにかくひたすら考え続けてきた人たち
です。だからタイトルのような疑問にも、だれもが納得する、シンプルで力強い「納得解」を提示してくれる、ということです。そしてそれは中学生くらいにも十分伝わるのです。ではその中身を見ていきましょう。
勉強するのは何のため?
・唯一絶対の正解なんてない、自分にとっての正解、自分なりの勉強する意味を見つけよう
・〈自由〉になるため、自由とは、できるだけ納得して、さらにできるなら満足して、生きたいように生きられているという実感。そうなるための力を身につけるため
なんで学校に行かなきゃいけないの?
勉強する意味はわかったとして、じゃあなんで学校に行かなきゃいけないの? 家で勉強してもいいんじゃない?という疑問に対しては、次。
・〈自由の相互承認〉の感度をはぐくむため。お互いがお互いに、相手が自由な存在であることを、まずはいったん認め合うこと。
・なぜ人間は戦争をやめることができないか?(中略)「人間がそもそも〈自由〉になりたいという欲望を持っているからだ。」
いじめはなくせるの?
〈自由の相互承認〉の感度をはぐくむのが学校だ、と言われても実際には、いじめもあるし、体罰の問題や同調圧力や人間関係のややこしさもある。ではどうするか。これに対して著者なりの解決策をいくつか提示しています。キーワードだけ挙げれば
- 人間関係の流動性
- 承認と信頼
- 教師の多様性
- 教師への信頼
- 学び合い(協同的な学び)
などが示されています。
学校空間を、もっと、すべての子どもたちが〈自由〉になるための力をはぐくみ、〈自由の相互承認〉の感度をはぐくんでいけるものへと、設計し直していく
そんな具体的な提案のエッセンスが、本の後半に紹介されています。
読後の感想
中学1年の姪っ子の疑問に答える、というきっかけで読み始めたものの、わが子(今、小学一年生と4歳)の学校生活や勉強への取り組み方について考え直す機会になりました。本質的には何のためなのか。そう考えると色々なものが取捨選択できるような気がします。先生も、親も、地域も、本質をとらえて、変わらないといけないのだろうなと考えさせられます。
著者の苫野一徳さん。従来型の学校教育に限界を感じる一方で、学校教育の新しい在り方を提示し、公教育のモデルとなるような学校「軽井沢風越学園(かるいざわかぜこしがくえん)」(設立設置認可申請中)にも携わっていらっしゃいます。この学校は要チェック。他の本も読んでみたいと思いました。
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