『学校の「当たり前」をやめた。』(工藤勇一)を読んで
Amazonでもランキング1位になったこの本、読んだ方も多いと思います。私にとっても重要な一冊になりましたので、内容や感想などご紹介したいと思います。
千代田区立麴町中学校で、これまでの常識にとらわれない取り組みをしている校長・工藤勇一さんの実践とその考えをまとめたこの本。発売から5か月で第9刷発行となっています。
学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―
- 作者: 工藤勇一
- 出版社/メーカー: 時事通信社
- 発売日: 2018/12/01
- メディア: 単行本
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読もうと思った理由
最初のきっかけは、このブログで何度も書いていますが、今年の正月、中学生の姪っ子に「どうして勉強ってするの?」と率直に聞かれたことから。その疑問に答えようといくつかの本を読んできましたが、そのなかで衝撃だったのは、苫野一徳さんの著書から。
「みんな同じ時間割」「みんな同じ教材」「みんな同じテスト」は「当たり前」ではない。
出典:学校をつくり直す(河出新書) 作:苫野一徳
学校には、慣例ばかりで本質を考えていないものが多い、前例踏襲になり目的が見失われているものが多い、そういった指摘がされていました。そう言われてみればそうだなと思うもの、多くないですか? そもそもなんでやっているの?ってこと。
そんな疑問に答えてくれそうなズバリなタイトル『学校の「当たり前」をやめた。』
そして本書は、ビジネス誌やテレビでも取り上げられ話題になっており、とてもユニークな教育や学校運営をしていることで有名になっていましたので、これはぜひと思い手に取りました。
印象的だったところ
第1章:目的と手段の観点からスクラップ(見直し)する
例えば生徒指導の場面で。
どうでもよいことなら軽く注意を促せばよい。逆に、命や人権に関わること、差別や暴力といった行為には厳しく対応し、自身の言動の意味を認識させる必要があります。
例えば、「書く」という行為の指導の場面で。
(略)子どもたちは、作文を書く際に、「他者意識」を持つことが少ないと思います。何を意識しているかというと、担任に「褒められること」「評価されること」、あるいは「怒られないこと」です。もしこのような意識で書かれているとすれば、将来に向けた、文章を書き、考えを伝える能力が身に付けることにはつながりません。
そうそう、手段が目的化している指導や授業がいつの間にか増えてしまったのではないでしょうか。じゃあ、どんな学校教育がいいのだろうということで次につながります。
第3章:新しい学校教育の創造
社会とシームレスな問題解決型カリキュラム
「非認知スキル」や「コンピテンシー」は、近年、話題になることが増えてきました。これらはとても重要な力であり、経験を通してしか身に付かず、しかし、一度身に付けると、その力は人生において繰り返し発揮してくれるものです。
それを育むため、ノート・手帳ガイダンスから始まり、ブレスト・KJ法などのスキルアップ合宿、ツアー企画取材旅行、模擬裁判、プレゼンテーション、などが1年から3年まで連続しています。感情をコントロールしたり、多様な人と協働したり、知識や技術を使いこなすことが求められたり、よりリアリティのある学びになるのではないでしょうか。
fancycrave1によるPixabayからの画像
これらの他にも、第4章:「当たり前」を徹底的に見直す学校づくり、第5章:私自身が思い描く、学校教育の新しいカタチ、などが展開されます。どの部分も読みごたえ満点です。
これからのスタンダードになるのでは
著者の工藤勇一さん。教育再生実行会議委員、経済産業省「未来の教室」とEd Tech研究会委員等、公職を歴任されているとか。これまでの学校の当たり前を見直す、他者意識や目的意識で再構築する、社会とシームレスにつながり創造する。こうしたことがこれからの学校のスタンダードになれば面白い、いや、なってほしい。そう思わされる内容でした。
こちらのパネルディスカッションも一見の価値ありです。
「What School Could Be アン/カンファレンス」のパネルディスカッション - YouTube
長文になりましたが、お読みいただきありがとうございました。