セクターを超えて。「コレクティブインパクト」と「トライセクター・リーダー」
このブログを始める理由 - 鈴井孝史ブログを書いたときに「異なるセクターの協働について」学んだことや考えたことを綴ってみたいと書きました。そこで今日は「コレクティブインパクト」と「トライセクター・リーダー」という言葉を簡単にご紹介したいと思います。
コレクティブインパクトとは
立場の異なる組織(行政、企業、NPO、財団、有志団体など)が、組織の壁を越えてお互いの強みを出し合い社会的課題の解決を目指すアプローチのこと。
個別組織がそれぞれ個別のアプローチをとるのではなく、複雑化、相互依存関係にある社会課題に対して、行政、企業、NPOなどがセクターを超えて、共通のゴールを目指して協力し合うアプローチということです。2011年に提唱された比較的新しい概念です。
具体例としては、国内では2017に尼崎市で始まった、コレクティブフォーチルドレンというプロジェクトがあります。(http://cforc.jp/)これは、子どもたちが生まれてから社会に出るまで、行政のサービスにうまく当てはまらなかった子どもたちに対し、NPOや民間が連携し、セーフティネットの網の目から抜け落ちないようにサポートする総合的なパッケージの仕組みを作ろうというものです。
コレクティブインパクトが成立する5つの条件があるそうです。*1
- 1, 共通のアジェンダ (Common Agenda)
全ての参加者が、変革に向けた共通のビジョンを持たなければならない
課題に対して共通の認識をもち、合意が得られた行動を通じて、共に問題解決を行う
- 2, 評価システムの共有 (Shared Measurement)
全ての参加者が、共通の方法で成果を測定・報告し、それらを通じて学習・改善する
- 3, 互いに強化し合う活動 (Mutually Reinforcing Activities)
様々な分野のステークホルダーが、それぞれに特化した活動を通じて、互いを強化し合い連携する
- 4, 継続的なコミュニケーション (Continuous Communication)
信頼を築き、共通の目的を持ち、モチベーションを創り出すために、すべてのプレーヤーが、継続的なコミュニケーションをとる
- 5, 活動を支えるバックボーン組織 (Backbone Organization)
全体のビジョンや戦略を導いたり、測定システムを確立したりなど、活動をサポートする独立した組織のこと
コレクティブインパクトという言葉を使うかどうかは別としても、本当に社会課題を解決しようとすれば、自ずと行政、企業、NPOの緊密な連携が欠かせないという場面は多いと思います。共通アジェンダ、評価システムの共有など、スタート前の議論がかなり重要なようです。取り組みに時間はかかっても確実な社会的インパクトのためには今後は必須な考え方になると思いました。
トライセクター・リーダーとは
2014年、ハーバード・ビジネス・レビューの「トライセクター・リーダー:社会問題を解決する新たなキャリア」という特集が最初だそうです。
トライセクター・リーダー(Tri-sector Leader)とは、民間・公共・社会の3つの垣根を超えて活躍する人材を言うとのこと。*2 *3
先述のコレクティブインパクトのように、複雑化した社会問題、また競争が激化したビジネス環境では、どのセクターの組織も、その垣根を超えて連携し、真の意味の、あるいは持続的な課題解決を志向する必要が増していると感じます。そういった連携をつなぐことのできる資質やスキルを持った人材をトライセクター・リーダーと呼ぶのだろうと思います。
トライセクター・リーダーの6つの特徴というのも紹介されていました。引用します。
【1】理想と実利をともに追求する
【2】無関係に見える状況の類似性を見抜く
【3】状況判断力に優れている
【4】知的専門性を高める
【5】セクター横断的な人脈を築く
【6】心構えを忘れない
なかなかこのような立派な人材になるのは難しそうですが…(汗)アフターファイブでNPOの活動に参加するとか、私のようにプロボノをやってみるとか、真面目なブログを書いてみるとか、そうしたことから磨かれていくものもあるのかなと思ったりします。
今日はそんなところで。